メッセージ : 生命を立たせてください
【生命を立たせてください】使徒言行録3:1−10
エルサレム神殿の参道の門(「美しの門」)に、毎日運ばれてきては置かれている男がいた。生まれつき歩けない男で巡礼者たちから施しを受けることを生業にしていたのだった。生業とは妙だが、それが「不運」なこの男の処し方だったし、家族にとっても都合が良かった。そこにあったのは「願望の封印」と「不運の逆利用」だった。人間は、時と場合によっては、そのような諦めと開き直りで生きるしかなくなることがある。
人々はというと、そのような者の傍らを見ぬふりをして通り過ぎるようになるし、あるいは、わずかな金銭を投げ入れて、関わり合うことの代償にするのだ。「美しの門」は、人が行き交いながら、ふれあうことの無い交差点だった。
東日本大震災から1年。人間の中に次第に起こっていく辛く淋しい有様を、この「美しの門」が、映してはいまいか。
ペトロとヨハネは、この男をじっと見た。彼の封印された願望の奥底を、慈しむように深く見て呼びかけた。「金銀ではない。あなたを生かすのはイエス・キリストの名。あなたに本当に必要なのは神に愛されている証と、この世に生を受けたことを喜ぶ魂の炎である。」
●3月11日 週報巻頭言 吉高 叶
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