凄い話、凄い出来事
「原爆の図」をはじめ戦争の悲しみを大屏風に描くことを生涯のテーマとした画家・丸木位里さん、俊さん。彼らは晩年に「地獄の図」という作品を描いた。人間の罪深さ、人間のもたらす悲惨をそこに描き込んだ。そして「そこに自分たちもその絵の中にいなければならない」と、互いに互いの姿を最後に描き込んだ。
「地獄の絵」にまつわるそんな話を本人たちから聞かされた知人の鈴木伶子さんは、お二人に語りかえした。
「確かに、私たち人間は丸木さんが描いたように地獄行きの存在そのものだと思います。しかし、私たちの信じているキリスト、イエスという人は、自らも死んで“その地獄”に行き、罪の裁きに苦しむ世界に置かれた後、そこからよみがえり、その命の中に滅びるばかりの人間を連れ出してくださった方なのです」と。
その話を聞いた丸木位里さんはしばらく絶句した後で、「凄いはなしだ・・・」とつぶやき、また黙り込んでしまわれたそうだ。
そうだ、凄いはなしだ。地獄の図は神のいない虚無の図ではない。地獄に傷だらけのキリストが居て、苦しむ人々に手を伸ばして抱きかかえようとしている、凄い出来事なのだ。
わたしたちは、どこにいても、どうであっても、キリストに抱きかかえられていて、彼のところにいることができるのである。
牧師 吉高叶(11月1日 墓前礼拝より)
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